ここでは気管切開で人工呼吸器
を装着している場合の口腔ケア
の例を簡単にまとめてあります
対象者の状態やケアする人に
より必要物品や細かな手技等は
異なる部分もありますので、
一つの例としてご利用ください。
◆口腔ケアの目的
人工呼吸器関連肺炎を防止する
為には肺炎の原因となる細菌等
をできるだけ少なくする必要があります。
口腔、咽頭等に存在する細菌
等を少なくする為には口腔内の
清潔保持が欠かせません。
人工呼吸器を装着していなくて
も口腔内の清潔保持は大切にな
りますが、装着している場合は
肺炎になる可能性がより高くなります。
◆口腔ケアの準備
対象者に合った歯ブラシ等、
必要なものを準備します。
歯ブラシはヘッドが小さめで、
柄の部分は握りやすいものを選びます。
ブラシの部分はナイロン製の
やわらかいものを選びます。
吸引チューブ付きの歯ブラシを使用すると便利です。
対象者に合った体位にします。
人工呼吸器を装着している場合
は臥位でのケアになる場合が多いと思います。
側臥位にしなくても仰臥位
(ベッドアップ30度~45度)で
顔を横に向け、頭部をやや
前屈させたほうが気管への流入
を少しでも抑えることが出来ます。
◆口腔内の観察
ペンライトや歯科用ミラー等を
使用して満遍なく注意深く観察します。
歯石、歯垢、虫歯、破折、
動揺などの有無、義歯の有無
や装着状態、舌の色や舌苔の
程度、乾燥状態、潰瘍などの
有無、発赤、腫れ、出血など
の有無、付着物などの有無、
口腔内の乾燥状態、開口障害の
有無や程度、嚥下機能や障害
の程度、口臭の状態などを観察します。
◆口腔ケアの実践
口唇や口腔内を湿らせてから
ブラッシング等を実施します。
歯全体を1本ずつしっかりブラッシングします。
歯と歯の間、歯と歯肉の境は
小刻みにブラッシングします。
歯ブラシだけでは清掃が困難
な歯と歯の間をデンタルフロス
や歯間ブラシ等を使用して歯垢を除去します。
舌の上面(舌背)の舌苔に対
しては専用の舌ブラシやスポン
ジブラシなどを使用します。
舌ブラシは舌の奥から手前に向けて軽く擦ります。
口蓋や頬の粘膜などはスポンジ
ブラシやソフトガーゼ等を使用
して付着物を取り除きます。
最後に、洗浄・吸引します。
誤嚥しない様に吸引管や吸引
チューブ付きの歯ブラシ等でしっかり吸引します。
◆注意すること
口腔ケアが実施できる状態か
どうか病状を把握しておきます。
出血傾向や感染症のある方は事前に把握しておきます。
気管内への流入を防ぐためには
カフ圧をやや高めにしてからケアを実施します。
*ケア後は必ず適正な圧に戻します。
体位も対象者に合った姿勢にします。
口腔内に液体が溜まらない様に
吸引やスポンジ、ガーゼなどで
液体をこまめに取り除きます。
口腔内に歯ブラシやガーゼ、
スポンジ等を挿入する時は、
湿らした後、必ず余分な水気はきっておきます。
介護職員等の方が実施する場合
は医師や看護職員等からの指導
などをふまえ、対象者に合った
安全で効果的なケアが出来るように検討しておきます。
口腔内の細菌の繁殖について
口腔ケアで細菌が減少しても
5~6時間後には元に戻るといわれています。
継続的に口腔ケアを実施する
ことで徐々に細菌数は減少する
と言われています。
口腔ケアの回数
一般的には4時間ごとに実施
すると良いと言われている様で
すが、対象者の状態や介護する
方の状況も考慮して検討することが必要です。
回数よりも歯垢を確実に除去
することがより重要になります。
洗口液について
口腔内を洗浄する為の洗口液
には緑茶や白湯、水道水等
家庭内で準備できるものから
消毒剤や消炎剤、保湿剤、
口臭予防剤、清涼剤等が配合
された市販のものまで色々あります。
口腔内の状態や個人に合った
洗口液を選択することが必要になります。
◇参考文献
書籍
「呼吸サポートチームのための呼吸管理セーフティーBOOK」
メディカ出版 p142~p144 p181~p182
「人工呼吸ケアのすべてがわかる本」照林社 p229~p230
「実践できる在宅看護技術ガイド」学研 p151~p154
「介護職員のための医療的ケア」ミネルヴァ書房 p120
「気管切開 最新の主義と管理」改訂第2版 医学図書出版株式会社 p147~p148
インターネット
ウィキペディアHP内
//ja.wikipedia.org/wiki/口腔ケア