気管カニューレからの吸引


ここでは主に介護職の方が在宅

で侵襲的人工呼吸療法を受けて

いる方に対するケアについてまとめてあります。

介護職員等の方がケアする場合

の対象者は状態が安定している方になります。

 

◆侵襲的人工呼吸療法を受けている方の気管カニューレからの吸引

看護師等により手技や取り扱う

医療機器など異なる場合もあります。

一つの参考例としてご利用頂ければと思います。

 

●呼吸器を装着していない場合との比較

気管カニューレと人工呼吸器の

フレキシブルチューブ等に接続

しているコネクタとの取り外し

や接続する手間が加わることになります。

人工呼吸器を装着している場合

の気管カニューレからの吸引は

人工呼吸器の着脱の操作が加わ

る為、呼吸器を装着していない

場合に比べ多少煩雑になります

が基本的には変わりません。

 

 

◆大まかな手順(人工呼吸器装着時の気管カニューレからの吸引)例

吸引前は人工呼吸器の作動状態

と対象者の状態を観察し異常が

ないことを確認してから実施します。

吸引前後は必ずパルスオキシ

メーターで酸素飽和濃度の確認をします。

 

①コネクタ(人工呼吸器側)と気管カニューレの接続部分を少し緩めておく

吸引カテーテルを挿入する前に

コネクタと気管カニューレの

接続部分を片手でも取り外す

ことが出来るように、少し緩めておきます。

 

②吸引カテーテルを吸引器の接続管に接続

この時に注意することは、吸引

カテーテルの挿入部分が他の

部分に触れないようにします。

 

③吸引カテーテルを持って、もう一方の手で接続部分を取り外す

この時に注意することは人工

呼吸器のフレキシブルチューブ

などの内側に溜まった水滴が、

気管カニューレ内に落ちないようにします。

取り外すタイミングは、人工

呼吸器の吸気の後になります。

人工呼吸器を外すとアラーム音

が鳴るため、消音ボタンを押します。

 

④取り外したコネクタ部分(人工呼吸器側の接続部分)を清潔な場所に置く

清潔で吸湿性のある布やタオル

などの上に置きます。

 

⑤吸引を実施

 

⑥吸引が終わったら、すぐにコネクタ(人工呼吸器側)を気管カニューレ

に取り付ける

この時に注意することは人工

呼吸器のフレキシブルチューブ

などの内側に溜まった水滴が

気管カニューレ内に落ちない

ように、水滴をよくはらって

からコネクタを取り付けます。

水滴が気管内へ入ると肺炎のリスクが高まります。

 

⑦呼吸状態を確認

人工呼吸器と胸の動きが同調し

て呼吸が回復しているか確認します。

パルスオキシメーターで酸素

飽和濃度の確認をします。

 

吸引後の操作が全て終わったら

対象者に終了の声かけをして姿勢を整えます。

 

⑧コネクタと気管カニューレの接続部分の確認

人工呼吸器側のコネクタと気管

カニューレが外れないように、

しっかり接続されているか確認します。

 

⑨人工呼吸器が正常に作動しているか再度確認

同調しているか、設定通りに

なっているか、アラーム機能が

回復しているか確認します。

 

気管カニューレにサイドチュー

ブが付いている場合は、サイド

チューブからの吸引も実施します。

気管カニューレ内の吸引前と吸引後に実施します。

 

上記以外の手順は人工呼吸器を

装着していない場合の気管カニ

ューレからの吸引と基本的にはかわりません。

人工呼吸器を装着していない

場合の気管カニューレからの

吸引については下記ページをご参照ください。

*当サイト内

気管カニューレからの吸引

吸引前の準備

吸引の実践手順

 

 

◆注意すること等

コネクタの着脱の時に人工呼吸

器のフレキシブルチューブ等の

内側に溜まった水滴が気管カニ

ューレ内に落ちないように注意します。

 

水滴が気管内に流入すると肺炎

のリスクを高めたり咳嗽の誘発

等で苦痛を与えるリスクが高くなります。

 

コネクタはフレキシブルチュー

ブの先に付いており気管カニュ

ーレと接続する部分です。

 

コネクタの着脱は利き手で行い

片手でも簡単に取りは外すこと

が出来るように接続部分を少し緩めておきます。

紐などで固定してある場合は

紐などをほどいておきます。

フレキシブルチューブが気管

カニューレより高くならないようにします。

コネクタを外すタイミングは

人工呼吸器から空気が送り込ま

れ胸郭が拡がったのを確認してからになります。

コネクタを取り付けるときは

フレキシブルチューブ内の水滴

をよくはらってから接続します。

 

吸引の刺激でカフ圧が変化する時もあります。

カフ圧が低下した場合や呼吸

器回路に問題がある場合はエア

リークの可能性があるため気道

内圧が低下していないか確認が必要です。

反対に気道内圧が高ければ、

痰などが残っている可能性もあります。

 

1回で吸引しきれない場合は、

一度、呼吸器に接続して呼吸

が整ってから2回目の吸引を実施します。

 

肺炎のリスクを少しでも低下

させるためにサイドチューブ

からの吸引を習慣付けておくことも大切です。

 

栄養チューブが挿入されている

場合は、口腔内にチューブが

出てきていないか確認します。

 

パルスオキシメーターを装着

している場合は吸引前と吸引中

吸引後や状態が変化した時など

数値に変動がないか、常に意識してケアにあたります。

 

介護職員等の場合は異常の早期

発見に努め、バイタルサイン等

の数値の異常や患者さんの状態

の変化、呼吸器や気管カニュー

レなどに関する異常などがある

場合は、早急に看護師等に報告

することが大切になります。

直接的な対策や処置(痰の

吸引や応急処置以外)や判断

等は医師又は看護職員になります。

サイドチューブ付き気管カニューレについて

カフ上部の吸引機能付きの気管

カニューレのことです。

製品によって名称は異なります

カフの上部に吸引口が付いています。

カフの上部に溜まった分泌物を

サイドチューブを介して吸引で

きるようになっています。

カフの上部に溜まった分泌物

(唾液や鼻汁など)などが、

少しでも肺へ流れ込まない様に

して肺炎のリスクを低下させる役割があります。

 

サイドチューブからの吸引について

サイドチューブからの吸引は

気管カニューレからの吸引の前後に実施します。

気管内吸引時は陰圧になるため

カフ上部に溜まった分泌物が

カフの隙間を通って肺の方へ流入しやすくなります。

気管内吸引前は当然実施します

が吸引後にも実施するのは陰圧

により唾液や鼻汁などの分泌物

がカフ上部の方に再び溜まる可能性があるためです。

気管カニューレからの吸引の

前後に実施することで、肺への

流入をより軽減できる可能性があります。

気管内吸引の前後以外には、

カニューレ交換等の時の抜管前に実施します。

吸引の方法は吸引器の接続管と

サイドチューブをつないで吸引します。

 

侵襲的人工呼吸療法

気管挿管や切開気管して気管に

留置した管に人工呼吸器を接続

して呼吸管理を行う療法を侵襲的人工呼吸療法といいます。

在宅では鼻や口からの挿管では

なく気管切開下陽圧換気(TPPV)が主流です。

これに対し口や鼻にマスクを

装着して人工呼吸器を接続して

呼吸管理を行うことを非侵襲的人工呼吸療法といいます。

在宅では非侵襲的陽圧換気(NPPV)が多くなってきています。

続きはこちらです→ 人工呼吸器装着時の合併症について

 




人工呼吸器装着時の介護 項目一覧


◇参考文献 

インターネット

厚生労働省HP内

喀痰吸引等指導者マニュアル(第三号研修) p110

www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_

kaigo/shougaishahukushi/kaigosyokuin/dl/manual_all.pdf

平成24年度 喀痰吸引等指導者講習事業(第三号研修指導者分)資料

www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaigosyokuin/

 

書籍

「ナース必携最新基本手技AtoZ 保存版」エキスパートナース 小学館 p74~

「呼吸サポートチームのための呼吸管理セーフティーBOOK」メディカ出版 p120~p

「介護職員等のための 医療的ケア 喀痰吸引・経管栄養等の研修テキスト」

 公益財団法人 日本訪問看護財団(編) p98~

「気管吸引のガイドライン完全準拠 わかる!できる!

 気管吸引あんしん教育ガイド」 メディカ出版 p20~

「人工呼吸ケアのすべてがわかる本」照林社 p134~

「器械的人工呼吸マニュアル」ナース専科 文化放送ブレーン p95~

「写真でわかる臨床看護技術2」インターメディカ p50~