人工呼吸器使用前のチェック方法


トラブルを最小限に抑える為には

人工呼吸器本体や呼吸器回路等を

事前にチェックすることが大切になります。

 

人工呼吸器の点検・確認は、

人工呼吸器の組み立て(各機器

の接続)をする時、各設定を行う

時、動作確認をする時、呼吸器

を使用している時、定期点検を

する時などに行われます。

 

◆アラームの主な点検・確認項目とチェック方法

人呼吸器の異常を知らせるアラ

ームは重要な役割を果たしています。

その為、アラームが正常に作動

するかどうかの点検は不可欠になります。

 

●電源アラーム

電源アラームが正常に作動するか確認します。

本体の電源スイッチをONに

したまま、電源プラグを電源

コンセントから抜いた時に、

アラームが作動することを確認します。

 

●供給ガスアラーム

ガスの供給が正常に行われているか確認します。

酸素ボンベなどのガス供給源の

耐圧管を外した時にアラームが

作動することを確認します。

同時に酸素ボンベなどの容量も確認します。

 

●吸気圧下限アラーム

吸気圧下限アラーム(低気道内

圧、気道内圧下限等)が正常に

作動するか確認します。

呼吸回路の1ヶ所(接続部分の

いずれか)を外した時に気道内

圧が反応しないことを確かめます。

さらに一定時間後にアラームが

作動することを確認します。

 

●吸気圧上限アラーム

吸気圧上限アラーム(気道内圧

上限、回路内圧上限、高気道内圧

等)が正常に作動するか確認します。

Yピースの口(対象者側)を塞ぎ

圧が設定された上限の圧に達し

た時にアラームが作動し、吸気

から呼気に切り替わることを確認します。

 

●無呼吸アラーム

無呼吸アラームが正常に作動するか確認します。

Yピースの口(対象者側)を開放

し一定時間経過後にアラームが

作動することを確認します。

 

●その他

各アラームがONになっているか確認します。

 

アラームの動作確認以外にも

呼吸器装着前のチェックとして

人工呼吸器が指示通りの設定に

なっているか、設定した通りに

呼吸器が作動しているかなどの

点検・確認は不可欠です。   

 

 

◆人工呼吸器使用前の呼吸器回路のチェック方法

●呼吸器回路の主な点検・確認項目とチェック方法 例

回路の組み立ての確認 例

吸気と呼気の回路が正しい方向

にセッティングされているか確認します。

吸気から呼気のガス(空気)

流れをイメージしながら指でたどります。

 

本体の吸気回路から始まって

加温加湿器(人工鼻が無い場合)

→ ウォータートラップ

→ Yピース → 人工鼻(加温

加湿器が無い場合)

→ フレキシブルチューブ

→気管カニューレ

(肺でガス交換)

ココから呼気へ 

気管カニューレ

→ 人工鼻(加温加湿器が無い場合)

→ Yピース

→ ウォータートラップ

→ 呼気弁

ウォータートラップは1個又は無い場合もあります。

 

回路の接続の確認 例

回路が正しく、しっかり接続

されているか確認します。

本体の吸気口及び呼気口と回路

の接続、加温加湿器の接続

(本体側と対象者側2箇所)

ウォータートラップの接続(2箇所)

Yピース(吸気側、呼気側、人工鼻側計3箇所)

人工鼻(Yピース側と気管カニューレ側2箇所)

加温加湿器の場合は、チャンバー

(上の部分)と加温加湿器の

本体の接続も確認します。

ウォータートラップもふたと容器の部分の接続を確認します。

 

加温加湿器の確認 例

加温加湿器を使用する場合は温度と水位を確認します。

水位が低い場合は滅菌精製水を補充します。

加温加湿器の電源を入れて温度

を調節し、正常に作動するか確認します。

他にもヒーターワイヤや温度プローブの接続も確認します。

 

ウォータートラップの確認 例

ウォータートラップの位置を確認します。

容器内の溜まった水が逆流しな

い様に、容器を下向きにして、

呼吸回路の一番低いところに置きます。

容器内に水がある程度溜まっていたら捨てます。

水抜き後はふたが正確にきちん

と接続しているか、必ず確かめます。

 

人工鼻の確認 例

人工鼻を使用する際は、加温

加湿器やネブライザーが取り

付けられていないことを確認します。

人工鼻(フィルター)に水が溜

まりすぎている場合は水抜きをします。

人工鼻に亀裂や破損、フィル

ターの汚染、目詰まり等がある場合は交換します。

 

破損などの有無

破損や亀裂などの有無を確認します。

破損や亀裂が生じやすいた部分

は、各接続部分の付け根やYピ

ース、フレキシブルチューブ

ウォータートラップ、呼気弁などになります。

 

その他

回路のねじれ、折れ曲がりがないか確認します。

回路内に水滴がないか確認します。

 

在宅ではすでに呼吸器を装着

している状態が殆どですが、

定期点検時はもちろんのこと

ですが、呼吸回路の交換や設定

変更などの時にも正常に動作す

ることを確認してから呼吸器を装着します。

 

上記の点検・確認は在宅で

あれば主に看護師が実施します

が、異常を確認したら速やかに

看護師などに連絡します。

 

人工呼吸器の種類によりチェッ

ク方法は多少異なります。

人工呼吸器や付属品などの種類

によって、取り扱い方は異なり

ますので詳細に関しては各人工

呼吸器及び付属品などの説明書をお読みください。

 

加温加湿器に関するヒヤリ・ハット事例など

加温加湿器内に給水する時に、

給水用ポートを使用せず、ガス

ポート(呼吸回路のチューブを

接続する部分)から給水しその後

回路のチューブを再接続する

のを忘れた事例が報告されています。

その他にも繰り返し報告されて

いる事例ではヒーターワイヤの

外れ、温度プローブの外れ、

給水忘れ、電源の入れ忘れなどがあります。

 

滅菌精製水とは?

日本薬局方で定められている水

には、常水(水道水)、精製水

滅菌精製水、注射用水があります。

精製水は水道水をろ過や蒸留

イオン交換などの方法で不純物

を取り除いた純度の高い水になります。

精製水を高圧蒸気滅菌法や

紫外線などで滅菌したものが滅菌精製水になります。

 

蒸留水について

蒸留水は精製水の一つ。

蒸留でつくられた純度の高い水を蒸留水といいます。

水を沸騰させると気体である水蒸気が発生します。

水蒸気を冷やすと液体の水に戻ります。

この方法が蒸留になります。

この方法でつくられた純度の高い水を蒸留水といいます。

滅菌蒸留水は滅菌精製水の一つ。 

続きはこちらです→ 人工呼吸器使用中のチェック方法

 




人工呼吸器装着時の介護 項目一覧


◇参考文献 

インターネット

医薬品医療機器情報提供ホームページ

人工呼吸器の取扱い時の注意について(その2)

www.info.pmda.go.jp/anzen_pmda/file/iryo_anzen11.pdf

人工呼吸の安全セミナーテキスト p6  p12

http://www.pmda.go.jp/files/000144877.pdf#page=2

人工呼吸器の取扱い時の注意について(その1)

www.info.pmda.go.jp/anzen_pmda/file/iryo_anzen07.pdf

医薬品医療機器総合機構HP内

製薬用水の品質管理  p98

http://www.pmda.go.jp/files/000203152.pdf#page=97

厚生労働省HP内

医療事故防止のための要点と対策 人工呼吸器

www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/1/torikumi/naiyou/manual/2a.html

人工呼吸器 ヒヤリ・ハット事例集

www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/1/torikumi/naiyou/manual/5a.html

ウォータートラップにかかる安全使用対策について

www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/dl/s0306-9d.pdf

ウィキペディア

ja.wikipedia.org/wiki/精製水

ja.wikipedia.org/wiki/蒸留水

 

書籍

「介護職員等のための医療的ケア 喀痰吸引・経管栄養等の研修テキスト」p71

 公益財団法人日本訪問看護財団(編)p70 71

「人工呼吸ケアのすべてがわかる本」照林社 p30 p48~p50

「気管吸引のガイドライン完全準拠わかる!できる!気管吸引あんしん教育ガイド」

 MCメディカ出版 p82~p86

「器械的人工呼吸マニュアル」文化放送ブレーン p14 p34

「写真でわかる臨床看護技術2呼吸・循環、創傷ケアに関する看護技術を中心に!」

 インターメディカ p75~p84

「呼吸サポートチームのための呼吸管理セーフティーBOOK」メディカ出版 p193~p197 p224

「はじめて人工呼吸器」メディカ出版 p62~p63

「ロールプレイで学ぶ呼吸ケア・呼吸管理のキーポイント メディカ出版 p252~p254

「ナース必携最新基本手技AtoZ 保存版」小学館 p74 p76

「気管吸引のガイドライン完全準拠 わかる!できる!気管吸引あんしん教育ガイド」メディカ出版 p86

「実践できる在宅看護技術ガイド」Gakkenn p130~p131