医療機関と在宅で使用されている
人工呼吸器は異なります。
ここでは在宅で使用されている
人工呼吸器の基本的なしくみについて記載しています。
◆呼吸回路と付属品の基本的な構造
人工呼吸器は大別すると呼吸器
本体と呼吸回路で構成されています。
呼吸回路は蛇管、ウォータート
ラップ、加温加湿器(又は人工
鼻)、Yピース、バクテリアフィ
ルター等から構成されています。
上記以外にも、ネブライザー、
フレキシブルチューブ、センサ
ーチューブ、ヒータワイヤ(熱線)などもあります。
人工呼吸器の機種により形態や
機能、構造等は多少異なりますが
基本的な構造と役割はほぼ同じです。
◆呼吸回路と付属品の基本的な役割
呼吸回路はガスや外気の通路になります。
吸気と呼気の通り道です。
呼吸器本体から送り出された
ガスや外気(吸気)を患者さんの
気道に導く役割と患者さんから
発生したガス(呼気)を体外へ
導く役割を果たしています。
又適度な湿度と温度を与えたり
細菌や埃などを除去する働きもあります。
●蛇管
蛇管は呼吸器本体と患者さんの
気道をつなぐ通路の役割があります。
管が蛇腹になっているため伸縮が可能です。
蛇管は呼吸器本体吸気側のフィ
ルタと加温加湿器の間、加温
加湿器とウォータートラップ
(吸気側)の間、ウォータート
ラップ(吸気側)とYピース
(吸気側)の間、Yピース(呼気
側)とウォータートラップ(呼気
側)の間、ウォータートラップ
(呼気側)と呼吸器本体呼気側
のフィルタの間をつなぐ役割があります。
ネブライサーを使用する場合は
ウォータートラップ(吸気側)
とYピース(吸気側)の間に取り付けます。
●ウォータートラップ
呼吸回路内の結露(水滴)をためる為の容器です。
人工鼻を使用するときは通常は必要ありません。
人工鼻の場合は結露が発生しにくいためです。
気管カニューレとフレキシブル
(フレックス)チューブをつない
でいる場合はフレキシブルチューブ内に結露が生じます。
人工鼻に結露水が流れ込まない様に注意する必要があります。
加温加湿器を使用する場合は必ず取り付けます。
結露防止の為のヒータワイヤ
(熱線)が挿入されていれば1箇所又は必要ありません。
吸気側に結露防止の為のヒータワ
イヤ(熱線)が挿入されていれば
呼気側だけ1箇所、吸気側と呼気
側両方に挿入されている場合は必要はありません。
取り付ける位置は吸気側の場合は
加湿器とYピースの間、呼気側の
場合はYピースと呼吸器本体呼気
側のフィルタの間になります。
●加温加湿器
呼吸器本体から送り出された
外気やガスは通常は低温で乾燥しています。
それらを防止する為に適度な
温度と湿度を与えるのが加温加湿器になります。
加温加湿器の取り付ける位置は、
吸気側の回路になります。
呼吸器本体吸気側のフィルタと
加温加湿器を蛇管でつなぎます。
加温加湿器は上部にチャンバーが取り付けられています。
チャンバーに蛇管の接続口がついています。
*人工鼻との併用はしません。
●人工鼻
加温加湿器を取り付けないときに使用します。
加温加湿とフィルターの役割があります
*フィルターのない人工鼻もあります。
呼気時に得た水分と熱を吸気時
に放出して湿熱交換を行います。
通常は気管カニューレ又は
フレキシブルチューブとYピースの間に取り付けます
気管カニューレとYピースは
フレキシブルチューブとコネクタ
で接続されている場合もあります。
気管カニューレ→コネクタ
→フレキシブルチューブ
→人工鼻→Yピース
在宅での人工呼吸器使用時には
加温加湿器より人工鼻の方が、
回路の簡素化と手間などがかか
らない為、有利に働きます。
●Yピース
Y字型のコネクタのこと。
接続する部分が3つになります。
気管カニューレ側と吸気側の
回路と呼気側の回路の3つをつなぐ役割があります。
●バクテリアフィルター
吸気側のフィルターは外気や
ガス内の細菌や埃などを除去し
感染を防止する役割があります。
呼気側のフィルターは外気への汚染を防止します。
特に感染症のある方は他の人へ
の感染を防ぐために必要になります。
※機種により構造は多少異なります。
人工鼻の種類について
人工鼻には加温加湿の機能のみ
とフィルタ付きのものがあります。
フィルタなしのものよりフィル
タ付きの人工鼻の方が死腔量が
多く呼吸時の抵抗は大きくなります。
医療機関用の人工呼吸器と在宅用の人工呼吸器の主な特徴
●在宅用の人工呼吸器の主な特徴
・家庭の電源やバッテリーで駆動できる
(圧縮空気や圧縮酸素を必要としない)
・構造がシンプルで操作が簡単
・コンパクトで持ち運びが可能
・バッテリーが内蔵されている
など
上記の様な呼吸器で高い機能を
持っている場合は医療機関でも
中央配管のない場所で使用出来ます。
在宅で人工呼吸器を装着して
いる方は主に人工呼吸器の離脱
が困難な方が使用しています。
その為、対象者に合った人工
呼吸器を選択すれば離脱に必要
な複雑な設定は不要になります。
●医療機関用の人工呼吸器の主な特徴
・圧縮空気や圧縮酸素を必要とする
・様々な機能が備わっている
・人工呼吸器からの離脱を目指している
・大型の機器が多い
など
続きはこちらです→ 人工呼吸器のアラーム(トラブル)
◇参考文献
書籍
「実践できる在宅看護 技術ガイド」学研 p130
「気管吸引のガイドライン完全準拠わかる!できる!気管吸引あんしん教育ガイド」
MCメディカ出版 p82~p91
「呼吸サポートチームのための 呼吸管理セーフティーBOOK」p152~157 メディカ出版
「介護職員等のための医療的ケア 喀痰吸引・経管栄養等の研修テキスト」ミネルヴァ書房 p69~p70
「写真でわかる 臨床看護技術2」インターメディカ p76~
「はじめて人工呼吸器」メディカ出版 p18~
「人工呼吸ケアのすべてがわかる本」照林社 p16 p349
「ナース必携最新基本手技AtoZ」小学館 p67~p71
「器械的人工呼吸マニュアル」ナース専科 文化放送ブレーン p10 p16
インターネット
ウィキーペディア
ja.wikipedia.org/wiki/電源
ja.wikipedia.org/wiki/電動機