◆経腸栄養剤の種類
大別すると自然食品をそのまま利用した天然流動食と自然食品
を人工的に処理し合成、添加した人工濃厚流動食と病態別栄養剤があります。
天然流動食には普通流動食と天然濃厚流動食があります。
人工濃厚流動食には半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤があります。
病態別栄養剤(疾患別栄養剤)には肝疾患用、腎疾患用、呼吸器
疾患用、糖尿病用、癌疾患患者用、免疫強化剤、食物繊維など
病態に合わせた栄養剤があります。
◆天然濃厚流動食について
天然食品をベースとして他の栄養剤を添加した流動食。
特徴
・天然食品をベースに、水分を少なくしカロリーを高くしている
・他の栄養剤を添加している
利点
・栄養価が高い
・経済的
・生理的な消化吸収が行われる
・消化機能が保たれる
など
欠点
・消化吸収機能が低下している場合は、適さない
・消化吸収が正常に働かないと、下痢をし易い
・濃度が高いため、下痢をし易い
・濃度が高いためチューブを通過しにくい(経鼻の場合)
・残渣が多い
・調製に時間がかかる
など
商品名例
医薬品
なし
食品
オクノス流動食品A・C など
他にも各食品メーカーから様々な種類が販売されています。
◆人工濃厚流動食について
天然食品を人工的に処理し、合成、添加した流動食。
半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤があります。
●半消化態栄養剤
特徴
高エネルギー、高蛋白の栄養剤です。
分解されていないタンパク質とポリペプチドを含むため体内で
分解(消化)する必要があります。
消化器系に問題がない場合に選択されます。
利点
味は他の人工濃厚流動食に比べ良いとされています。
他の人工濃厚流動食よりは生理的な消化吸収が保たれます。
浸透圧が高くないため、下痢を引き起こし難いです。
欠点
残渣は少ないですが、消化吸収の機能が低下している場合は
適しません。
商品名 例
医薬品
エンシュア・リキッド、エンシュアH、ラコール、 など
食 品
オクノスNT-5 テルミール リキッドダイエットK-4SP
濃厚流動食L-7TER など
他にも各食品メーカーから様々な種類が販売されています。
●消化態栄養剤
特徴
低分子ペプチドとアミノ酸を含むため、消化吸収が容易
糖質はデキストリン(多糖類)、二糖類など
脂質は少量
利点
消化吸収が容易。
残渣を殆ど残さない。
粘度が低いため管が詰まりにくい。
欠点
脂肪分が少ないため、他で補う必要がある
生理的な消化吸収ではないため腸管の機能や免疫が低下し易い
味や香りがあまりよくない
商品名 例
医薬品
ツインライン、エンテルード など
食 品
エンテミールR、 ペプチーノ など
●成分栄養剤
特徴
タンパク質ではアミノ酸のみを含む体に必要な成分を殆ど含ん
でいます。
糖質はデキストリン。
脂質は少ないです。
他の栄養剤より浸透圧が高いです。
利点
消化を必要とせず、すべての栄養成分が吸収される
残渣がほとんどない
欠点
脂肪分が少ないため、他で補う必要がある
他の栄養剤より浸透圧が高いため、下痢をしやすい
商品名 例
医薬品
エレンタール ヘパンED、アミノレバンEN など
食品
なし
◆病態別栄養剤(疾患別栄養剤、特殊な組成の栄養製剤)
病態にあった成分が配合されています。
●肝疾患用の栄養剤
肝硬変や肝不全などの疾患に処方されることが多い。
医薬品名 例
ヘパンED、アミノレバンEN など
食品名 例
ヘパス
●腎疾患用の栄養剤
腎機能障害や腎不全などに使用される栄養剤です。
タンパク質を制限、低ナトリウム、低カリウム、低リンの
栄養剤が中心です。
食品名 例
リーナレン レナウェル など
●呼吸器疾患用の栄養剤
慢性閉塞性肺疾患などに使用されることが多いです。
二酸化炭素の産生を抑えるためにエネルギー源を糖質より脂肪
の割合を多くしています。
食品名 例
プルモケア など
●糖尿病用の栄養剤
糖質を少なくし、脂質を多くしています。
脂質はオレイン酸を多く含みます。
血糖上昇抑制のため、食物繊維が含まれています。
食品名 例
グルセルナ、インスロー など
普通流動食
重湯、牛乳、豆乳、スープ、果汁など。
天然濃厚流動食
普通の自然食品をミキサーにかけるミキサー食と天然食品を
ベースとして他の栄養剤を添加した流動食があります。
通常は市販されているものを天然濃厚流動食と呼ぶことが多いです。
続きはこちらです→ 流動食について
◇参考文献
インターネット
日本流動食協会
http://www.ryudoshoku.org/index.html
厚生労働省HP内
経腸栄養剤の適正使用に関するお願いについてPDF
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000191eu-img/2r985200000191l9.pdf
PEGドクターズネットワーク(PDN)HP内
http://www.peg.or.jp/lecture/enteral_nutrition/02.html
http://www.peg.or.jp/lecture/enteral_nutrition/02.pdf
ウィキーペディアHP内
食餌療法
http://ja.wikipedia.org/wiki/食餌療法
成分栄養剤
http://ja.wikipedia.org/wiki/成分栄養剤
書籍
「最新医学大辞典」医歯薬出版株式会社 p1303,p1304
「人体生理学ノート」金芳堂 p114
「646食品成分表」 一橋出版 p141
「PEG(胃瘻)栄養・適切な栄養管理を行うために」
改訂版フジメディカル出版 p54,p55,p56 p82,p83,p184,p185
「胃瘻PEG合併症の看護と固形化栄養の実践」
日総研 p120